成年後見の申立を取り下げたい
成年後見の申立を行ったものの、やはり辞めたいので取り下げしたい、という相談が最近増えてきています。
成年後見の申立を行った場合、正確には申立書類を裁判所に提出した後に、この申立を取り下げるには家庭裁判所の許可を得られなければ、取り下げることができません。何度か折に触れて記事にして書いてきていますが、改めて書いてみたいと思います。
成年後見申立時に司法書士や弁護士が関与している場合には、申立後に申立の取下げを行う場合には裁判所の許可が必要である旨の説明を必ず受けるはずです。しかし、自分自身で申立書類を作成して、申立を行った場合には、このことを知らずに手続きを進めてしまっていることがあります。
後見申立をご自身で行う場合、司法書士や弁護士に支払う報酬がない分お徳ですが、その報酬以上に失うことのほうが多いようです。税金の申告を自分でやってみたものの、結局税理士に依頼したほうが税理士報酬を含めても割安だったということはよくあります。
当事務所では初回相談時に後見制度のデメリットの部分も説明しますので、申立人の状況によっては利用を断念するということもあります。ご自身でデメリットをきちんと把握せずに申立を行い、その後やっぱり辞めたいというように都合よくはいきません。
取り下げ理由としてよくあるのが、下記の5つです。
①後見人候補者として申立人自身を立てたが選任してもらえなかった。
②後見制度支援信託あるいは監督人を付けるか選択するよう家裁から迫られている。
③申立後に財産がほとんどないことが判明した。
④申立後に後見制度を利用する本人の判断能力が回復した。
⑤財産が自由に使えないことに不満が出てきた。
当事務所の経験上では、申立後に財産がほぼないことが判明したケース、申立後に本人の判断能力が回復したケースでは、申立の取り下げが認められました。しかし、家裁としても取下げは基本的に認めないことが多いので、レアケースといえるでしょう。
特に②の「後見制度支援信託あるいは監督人を付けるか選択するよう家裁から迫られている」のケースでの問い合わせが増えてきています。後見制度支援信託するにも、監督人を付けるのも専門職への報酬が発生します。後見制度支援信託は信託契約の際に、1回だけ専門職へ報酬を支払えばよいのに対し、監督人を付ける場合には、基本的に本人が亡くなるまで報酬は発生することになります。
ただし、監督人がいる場合には、困ったことや分からないことがあった場合には、気軽に相談でき、定期報告書類も監督人がチェックしてくれるので、安心というメリットもあります。どちらを選んでもよいですが、後見制度支援信託を選択する場合には、当事務所でご支援できますので、一度お問合せ下さい。
ちなみに、申立書の上部の目立つ場所に下記のような記載がありますので、見落とすことはないかと思いますが念のためご注意ください。
申立後は,家庭裁判所の許可を得なければ申立てを取り下げることはできません。