将来の判断能力の低下に備えたい
任意後見契約を考えている方の中には、今すぐ何らかのサポートを受ける必要はないけれど、いつ認知症や事故などによって判断能力が低下するか分からないので不安だ、という方もいると思います。
ひょっとするとずっとサポートがいらないかもしれませんが、万一のことを考えておきたい。
このような場合は、どうすればよいのでしょうか。
任意後見契約の効力発生までの時間差
任意後見契約は、家庭裁判所に対し、任意後見監督人を選任してもらってはじめてその効力が発生します。
任意後見監督人の選任申立をする場合というのは、本人の判断能力が低下しときです。
法律上、任意後見受任者が、本人の判断能力が低下したからといって、裁判所に任意後見監督人の選任申立をする義務というものはありません。
ということは、本人の判断能力が低下し、任意後見監督人の選任申立を行う必要があるにもかかわらず、そのまま放置されてしまい、本人の保護が図られないというケースも考えられます。
そうすると、将来判断能力が低下したときのために任意後見契約を結んだのに、これでは意味がありません。
任意後見監督人の選任申立義務
本人の保護が図られないということがないように、任意後見契約において、任意後見受任者は、本人の判断能力が低下し、任意後見契約による後見事務を行うことが相当であると認めるときは、家庭裁判所に対し、任意後見監督人の選任請求をしなければならない、といった選任申立義務の規定を盛り込むことが大切です。
この規定を設けることによって、本人の判断能力が低下してから、任意後見が開始されるまでのタイムラグをできるだけなくし、本人の保護を図っていくことが大切です。
「見守り契約」との併用
上記の任意後見監督人の選任申立義務の規定を盛り込んだところで、1年に1回しか会わないとか、遠距離に住んでいるといった場合には、本人の状況というものは分からず、「絵に描いた餅」で実効性のないものになってしまします。
そこで、できるならば本人と定期的に面談を行うとか、家族から状況をこまめに入れてもらうなどの体制が必要となります。これを契約という形にしておくことで実効性が確保されます。「見守り契約」といって、1ヶ月1回は面談や電話するなど、日ごろから相談や状況を把握するように定めておきます。「任意後見契約+見守り契約」の併用がより安心できるものとなります。