成年後見における代理権・同意権・取消権とは
成年後見における代理権・同意権・取消権とは
【成年後見人のケース】
■代理権
成年後見人の業務は大きく分けると財産管理業務と身上監護業務に分けられます。
特に成年被後見人は、常に判断能力を欠いている状況にあるものをいうので、後見人には包括的な代理権が与えられています。
包括的な代理権があるので、普通であれば、法律行為を代理人が行う場合には、委任(委任状)がなければなりませんが、後見人の場合には、これを必要としません。
ただし、この代理権は財産に関する法律行為に限定されます。というのは、例えば誰かと結婚する・離婚するとか誰かを養子にするといった行為を身分行為といいますが、これらは、あくまで本人の意思に基づき行われるべきものであるので、後見人といえども代理することができません。
また、遺言書を作成することも後見人は行うことができません。
■取消権
成年後見人は被後見人が行った法律行為を不利益なものだと判断すれば、取り消すことができます。
しかし、何でもかんでも取り消すことが認められているわけではなく、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」については、認められていません。
これは、被後見人は判断能力がない状況のものをいいますが、身の回りのちょっとしたことや、何を食べるかなど、被後見人いとってさほど不利益にならないであろう事に関しては、自己決定権を尊重する趣旨からきています。
■同意権
成年後見人には、同意権はありません。
同意権とは、これから本人が契約しようとするときに同意を与えたり、同意を与えていない場合に、勝手にしてしまった契約を取り消すことができる権利のことをいいます。
被後見人の場合、たとえ同意を与えたとしても、そのとおりに法律行為をする可能性は著しく低いので、成年後見人には、同意権は不要であるため、認められていません。
【保佐人人のケース】
成年後見人ケースと異なり、被保佐人になったからといって、本人には財産を管理する権限は残されたままです。
被後見人と比べると被保佐人のほうが判断能力がありますが、民法13条に定められている重要な法律行為については、保佐人に同意権と取消権が認められています。
実務上、司法書士や弁護士が保佐人となる場合には、申立時に保佐人に財産管理権を付与してもらうことが多いようです。
裁判所が司法書士などの専門家を選任した場合には、財産管理についての代理権を与え、被保佐人の権利侵害を防止しようとしています。
【補助人のケース】
保佐人と補助人の権限の違いは結構分かりにくいかもしれません。
まず、保佐人には上述したとおり、民法13条1項に定められた重要な法律行為については、当然に同意権があり、特定の法律行為については、代理権を付与して貰うことが可能です。
一方、補助人は、民法13条1項に定められた重要な法律行為のうち特定の行為についてだけ、同意権が認められるにすぎません。
同意権の範囲が保佐人と補助人とで比べると補助人が狭くなっていることが分かります。なお、保佐人と同様に、特定の法律行為に限定すれば、代理権を付与することが可能です。
なかなか違いを理解するのが難しいかもしれませんが、何ができて、何ができないのかを理解しておくことは後見制度を利用する上で、最も重要なことのひとつだと思います。