成年後見における成年被後見人の居住用不動産の売却について
日本が超高齢化社会に突入し、成年後見制度を利用して成年後見人による成年後見を受ける成年被後見人が増えていますが、成年被後見人が所有している不動産である居住用不動産の売却については、いくつかの注意点があります。
一般市場の不動産取引の現場では成年後見制度によって家庭裁判所に成年後見を認められた成年後見人が成年被後見人の所有している居住用不動産を売却する事例は少なくありません。
しかし、成年後見制度による成年後見人の後見を受けている成年被後見人の居住用不動産は、家庭裁判所が発行する許可審判書が無ければ売却を行う事が出来ません。
もし、成年被後見人が所有している居住用不動産を管轄の家庭裁判所の許可審判書無しに売却してしまった処分行為については、その全てが無効となりますので注意して下さい。
また、管轄の家庭裁判所に成年被後見人が所有している居住用不動産の売却に関わる許可審判書を発行してもらい売却を行った場合もその売却によって得る事が出来た資金は勿論居住用不動産を所有していた成年被後見人の財産となりますので、親族等が勝手に成年被後見人の居住用不動産を売却した資金を受け取るもしくは譲渡する事は出来ません。
万が一、成年被後見人が所有している居住用不動産の売却資金を成年被後見人本人以外の人が無断で着服または取得した場合には、業務上横領などの刑法で裁かれ刑事罰を科せられる事もあります。
成年被後見人の居住用不動産の売却の際には、居住用不動産の売却を行う事を許可する管轄の家庭裁判所の許可審判書を得る事が出来れば売却は可能です。
しかし、成年被後見人が所有している居住用不動産の売却を認める管轄の家庭裁判所の許可審判書は必ずしも発行されるとは限りません。
成年被後見人の後見制度を認定している管轄の家庭裁判所においては、成年被後見人が所有している居住用不動産の売却許可を得る為の審判申し立てが行われた際には、成年被後見人の現在の生活の状況や将来の居住の環境や成年被後見人の所有している財産の状況、そして成年被後見人が所有している居住用不動産の売却金額や売却先が妥当であり適切に選ばれているかなどを総合的な判断を含めた上で行う事となります。
家庭裁判所が成年後見を受けている成年被後見人が所有する居住用不動産を売却しても良いと認定して許可審判書を発行するケースは、あくまでも「成年被後見人にまつわる経済状況において売却が適切である」と認められた場合に初めて管轄の家庭裁判所から売却の許可審判書が発行されます。
また、許可審判書の発行には、成年後見を受けている成年被後見人の生活状況以外にもその売却価格が適正であるかどうかを複数の不動産業者により売買金額査定を行った上で適正価格と判断された場合にのみ家庭裁判所が許可審判書を発行します。
成年被後見人が所有している居住用不動産の売却の際に家庭裁判所に許可審判書を発行してもらうまでには様々な種類が必要となってきます。
成年後見を受けている成年被後見人が所有している居住用不動産の売却では、売買契約では停止条件を先に付けた上で居住用不動産を売却する場合と、売却の確定が予定されている居住用不動産物件に関わる居住用不動産の売却の申し立て時に家庭裁判所の許可審判書をもらった上で売却を進めてゆくケースがあります。
成年後見を受けている立場である成年被後見人が所有している居住用不動産の売却の際には、
・居住用不動産の処分を許可する審判申立書
・売却する不動産の全ての事項を証明する証明書と固定資産税における評価証明書
・停止条件付きの不動産売買契約書、または金額や買主が明記された家庭裁判所に提出する居住用不動産の売買契約書案
・居住用不動産の査定書
・処分が本当に必要であるかを報告する為の報告書
・その他の必要に応じた書類
などの数多くの書類が必要となります。
一般の人が一人で家庭裁判所に申し立てを行う事が出来ないという場合には、成年後見を受けている成年被後見人の居住用不動産を売却する時の手続きを司法書士に行ってもらうケースも増えてきています。