成年後見制度の基礎知識
【理解出来てる?成年後見】
不動産や預貯金の管理、それらの運用に伴う諸々の契約の締結、そして遺産分割の内訳決定など、これらの手続きって誰が行うものだと思いますか?
もちろん、財産を持つ本人です。しかし、それが認知症・精神障害等で判断能力が著しく足りない方々だったならどうでしょう?やはり、あからさまに不平等な契約を結ばされるなど様々な被害を被ることが考えられます。
そこで、そのような方々の保護や支援をするのが成年後見制度です。
成年後見制度を利用することで、親族など本人に近しい人が遺産相続の意思決定を行う事ができるのです。また、申し立てできるのは親しい人間だけではなく、四親等内の親族や市町村長 も可能になっています(市町村長が申し立てるケースについては後述します)。もちろん、代理で様々な意思決定を遂行するという責務を果たすので後見人には報酬が存在し、通常本人の財産から支払われます。
それでは、財産を持つ本人の判断能力が欠けていて、且つ後見人になるべき親族などが居ない場合はどうなるのでしょうか?
ここで重要になってくるのが区長申立という制度です。
上記のように、成年後見の申立が出来ない状況になった場合は親族に変わって市長または区長が申し立てることが出来ます。これが区長申立です。
【区長申し立てってなに?】
成年後見において、通常後見人となるのは諸々の判断な困難な方の親族です。
しかし、本人に後見人への報酬を支払えるだけの財産が無い、又は頼れる親族が居なかった場合には一体誰が後見人となり、成年後見を成立させるのでしょうか?
そして、成年後見の対象となる本人に十分な財産が無かった場合、後見人への報酬は一体どうすればいいのか?成年後見は普段あまり聞き慣れない手続きであることもあって、なかなかわかりにくい部分が多いです。
しかし、先ほど挙げた成年後見に関する様々な不安要素や疑問点を解決してくれるシステムがあるんです。
その答えが区長申立です。
区長申立とは、一言で言えば「本来親族がやるべき申立行為を、親族に変わって市長・区長が申し立てること」を言います。
しかし、この場合後見人は結局誰がやるのか?後見人への報酬はどうなるのか?といった疑問が出てくると思います。
それについて答えると、まず区長申立においては区が「リーガル・サポート」という司法書士団体に候補者の選定を頼み、リーガル・サポート側は候補者を会員の中から選び、推薦します。
また、選ばれた後見人の報酬に関しては、区長申立においては区に報酬を支給してもらうことができます。
もちろん、成年後見の対象となる本人にお金のないケースに限りますが、多くの人にとってメリットのある制度です。
【成年後見の悪用被害に注意】
昨今の高齢化や認知障害者人口の増加によって、成年後見の需要が増し、実際に成年後見制度の利用者は年々増えています。もちろん多くの場合は親しい人々のうちの誰かしらが後見人となるわけなのですが、ここで様々なトラブルが起きているのです。
例えば、後見人になって財産管理権を得ることで、自身の借金を本人の財産で返済するといった行為が成年後見の悪用に該当します。
このような、本人の判断能力の低下をいいことに本人の財産を勝手に使い込むというケースは後を絶ちません。
成年後見とは、結局は本人以外の誰かに財産管理を委ねるということです。したがって区長申立で選ばれた専門人でなければ様々な雑念が入り混じり、こういった被害が生まれてしまうのでしょう。
一方で、区長申立の場合はどうでしょうか?
結論を言うと、区長申立も完全に安心とは言い切れません。
もちろん、安易な財産の使い込みなどは回避できますが、後見人をビジネスとしか思っていない司法書士・弁護士は一定数存在します。そして彼らは後見人としての諸手続きをこなして報酬を得ることしか考えません。
このように、成年後見制度を利用するにしても悪用に関する様々なリスクが存在します。
このような悪用の被害に巻き込まれないためにも、普段から信用できる後見人について考えてみる必要があるのかもしれません。