成年後見制度の審判
認知症や知的障害、精神障害などが原因で、日常生活をスムーズに送っていく判断力が十分とはいえない状態になった方々が、それまで住んでいた地域の中で安心して暮らしていくことができるようにするために、成年後見制度が開始されました。
しかし信頼して資産の管理を任せられる家族がいない、どこに相談したらいいのか分からないなどの理由で、まだまだ十分にこの制度が活用されていないという現実があります。
成年後見制度を利用するためには、本人が居住している地域の裁判所に申立てを行います。
申立てをすることができるのは、本人が配偶者、4親等内の親族などと定められていますが、家族や親族がいない場合には、区市町村長が申立を行うことも可能になっています。
申立てをうけた家庭裁判所では申立人や後見人の候補者などから詳しい事情を聞きますが、本人がどういう状態であるか鑑定を実施する場合もあります。
審問や調査、鑑定の結果を受けて裁判所による審判が行われ、一般的なケースでは申立から3カ月程度で審判の結果が出ることになります。
審判書を受け取った成年後見人に選ばれた人から2週間以内に不服申し立てがなければ結果は確定し、本人が円滑に日常生活を送ることができるために適切な援助を行っていくことになるのです。
最近一人暮らしをしているお年寄りが訪問セールスに騙され、必要のない自宅の改装を行って高額の報酬を要求されるといった悪質な事件が多発しています。
認知症や知的障害、精神障害などのために判断力が不十分になってしまっている人が被害を受けないように、家庭裁判所に申立を行い、生活の援助をしてくれる人をつける制度を成年後見制度とよんでいます。
精神の障害によって判断が適切にできない場合がある人の利益を守りながら、残存能力をできるだけ生かし自己決定権を尊重し、障害を持つ人が地域や家庭で幸せに暮らしていくことができることを目指すノーマライゼーションの考え方が根本になっているのです。
成年後見の申し立ては、申立書や本人、申立人の戸籍謄本などを用意して家庭裁判所へ行います。
その後申立人や本人、後見の候補者について裁判所の調査官による詳しい調査が行われ、審判が決定されることになります。
審判は申立書に記入をした成年後見人の候補になっている人が選ばれることが多いのですが、状況によっては家庭裁判所再度の判断で、弁護士や司法書士などが選定される場合もあります。審判の告知や通知がされ法定後見が始まると、預貯金や収入・収支の管理、施設や介護に対する契約などの必要な援助をしてもらえるようになり、地域で自分らしく生活をしていくことが可能になるのです。
住み慣れた愛着のある地域で自分のペースで穏やかに暮らして行きたいというのは多くの人の願いですが、認知症や知的障害、精神障害を持っている方は判断能力を十分に発揮することができないために、高額の品物を訪問販売で売りつけられたりして不利益を受けることがあります。
本人の権利をしっかりと守るために、バックアップしてくれる人を選んで適切な援助をしてもらうのが成年後見制度です。
成年後見制度を利用するためには、まず本人の現住所管轄の家庭裁判所に申立てを行います。申立てをすることができるのは、本人、配偶者、4親等以内の親族なので、叔父や叔母、いとこなどの関係でも申立てを行うことが可能です。
地域包括センターや法テラス、弁護士会や司法書士会でも相談にのってくれるので、上手に利用したいものです。後見をできる親族がいない時には、弁護士や司法書士に依頼することもできます。
家庭裁判所では申立ての内容をもとに審問や調査、鑑定などを行って成年後見が必要であるかどうかを審判し、適切だと思われる人を後見人に選びます。
審判の結果は審判書を受領してから2週間後に確定する決まりになっているので、不服がある場合には2週間以内に不服申し立ての手続きを取る必要があります。