成年後見制度の目的は何なのか?
みなさん、こんにちは。
東京・渋谷の司法書士の新宮信之です。
成年後見制度の利用を辞めたい。
こういう方がいらっしゃいました。
はっきりと物事を話すA子さん(73歳)は、もともと病気によって成年被後見人となり、その人には弁護士が後見人として選任されました。
実務上珍しいケースではありますが、どんどん回復していって電話でお話をしていても、成年被後見人と言われてもまったく普通の人と同様に論理立てて物事を話すことができる方でした。
専門職の後見人が付くと、専門職には報酬を支払わなければなりません。
本人の財産や後見事務の内容によって大きく変わってきますが、月2・3万程度で、基本的には裁判所が公表している報酬規定に基づいて、決定されます。
A子さんは、もう自分ひとりで生活できるから、成年後見制度は利用したくない。
自分のしたいように何もできないし、お金はすべて弁護士が管理しているため、自由に使えない。
成年後見制度のもと非常に不自由な生活を余儀なくされていました。
自分は元気で、判断能力も十分あることを裁判所に説明するため、医師の診断書を自分で取りにいこうとしていました。
しかし、医師に診断書を書いてもらうにはお金がかかります。しかし、後見人からその必要はないと、お金を渡してくれません。
どうしたものかと悩んでいました。
誰のための制度なのか? 成年後見制度は間違いなく本人であるA子さんのための制度です。
この制度は、今ある能力を積極的に活用し、補う必要があれば後見人や保佐人・補助人がサポートをしていくというものです。
この趣旨は、本人の権利を制限するものではないということです。
A子さんは自分ひとりで物事を判断し、医師の診断書の必要性や制度の利用を辞めたいことを裁判所に何度も説明しています。
しかし、それは叶わずサポートという名の管理のものと不自由に生活しています。
本人の収入もものすごく少ないのに、そこから後見人の報酬が支払われるため、資金面でも厳しいですし、何をするにしても後見人の管理下にあるというのは、精神的にも辛いものです。
誰のための制度なのか、制度の目的は何なのか、改めて考えさせられました。