成年後見制度の行方
【成年後見制度とは】
成年後見制度とは、当事者の判断能力が不十分な状態あると判断される場合に、その判断能力を家庭裁判所の審判において三段階で判断し、「法定後見」により当事者の命を法的に守り、生活を支援する制度のことです。
また、当事者が元気であるが今後の生活において判断能力が落ちた時のために後見人を予め指名しておく「任意後見」を利用することで、当事者の生活を守ることが出来ます。
そもそも、なぜ成人後見人が必要なのでしょうか。
これは、判断能力が十分に無くなることで、生活に必要な物を購入したり、財産を管理したりするとい生活を行うことが困難な状況になるからです。
また、福祉サービスを受けようにも、当事者の判断能力が十分ではないという理由で、福祉サービスの契約を結ぶことも出来ません。このような事態を防ぐためにも、成人後見制度を利用し、自分の財産や権利を守ることが必要なのです。
では、後見人はどのような人を指名する事が出来るのでしょうか。基本的に、親族がいる場合には、親族がなる場合が多いです。
しかし、親族がいない方でも第三者に後見人をたてることが可能です。
第三者とは弁護士・司法書士・社会福祉士などの法律・福祉の専門家や友人、知人なども指名できます。
【成人後見人と問題点】
成人後見人をつける意義や必要性については前述したとおり、当事者が正常な判断が出来ない状態での生活を守る上で大変重要なことがわかります。
しかし、成人後見人にもいくつか問題が存在しているのも事実です。
【親族後見人の問題 】
親族が家庭裁判所により、後見人に選任された公的な立場だということを理解不十分な為、罪に問われる場合があります。
親族後見人は家族として当事者の身の回りの世話をし、お金の管理を行うという事態がありますが、これは一歩間違えると、罪に問われる場合があるのです。
親族後見人が、未成年後見人である場合、親族相盗例(家族の中で行われる犯罪行為、また未遂罰について刑罰の免除もしくは親告罪とすること)を認めていないのです。
つまり、未成年後見人が当事者の財産を当事者の生活の為以外の理由において使用した場合、横領罪に問われることになります。
【資力の乏しい人の後見人の問題】
資力が乏しく生活保護を受けており、後見人への報酬の支払いが困難な場合があります。
成年後見人への報酬については、家庭裁判所が当事者の財産の範囲や収入状況によって判断するため、財産の無い生活保護受給者は報酬の決定が行うことが出来ないのです。
【生活保護と成人後見人】
資力が乏しく生活保護を受けている人は、判断能力が不十分だと判断された場合、成人後見人制度を利用することは出来ないのでしょうか。
結論から述べさせていただきますと、成年後見人制度を利用することは可能です。
なぜなら、成年後見人制度を利用するにあたり、財産要件や所得要件などの既定は無く、十分な判断が出来ないことのみが利用要件であるからです。
しかし現実問題として、生活保護を受けており、成年後見人への報酬の支払いが不可能なのであれば、成年後見人制度を利用することが出来ないのです。
しかし生活保護を受けており、判断能力が十分にない状態で生活を続けることは非常に困難となります。
成年後見人制度は財産管理以外にも、身上監護のためにも必要なものなのです。
そのため、自治体によっては成年後見制度利用支援制度を設け、成年後見人制度を利用したい生活保護者に対する支援がされています。
十分な資力がない人に対して資金補助を行ったり、生活受給者の福祉サービスの無料化を行ったりしています。
しかし、この制度は一部の地方自治体にしか整備されておらず、まだまだ十分に行き届いていないというところから、今後更に充実を図る必要があります。