成年後見制度を利用するには
成年後見制度とは
金銭管理や財産管理、非常に繊細な判断を必要とする契約などを、疾患や老化など判断力の低下によって安全に行う事ができない場合に、家族や親族など近しい人物が代理人として判断や支援を行うことができる様にする法律的な制度を、成年後見制度といいます。
成年後見人を選任するかどうか、誰を選任すかは、司法の場である家庭裁判所に一任されており、家庭裁判所に対して、制度を必要とする人物か4親等内の親族などが申立てを行い、家庭裁判所の調査を経て審判される必要があります。
成年後見の申立て自体に条件や制限などは設けられておらず、必要とする人なら誰でも申立ての手続きを行う事ができます。ただし、法律的な知識が必要となる他、指定の書類を作成した上で裁判所に提出する必要があるため、基本的には、司法書士や弁護士などの専門家に依頼して申請するケースが大半を占めています。
ただし、申立てを行ったからといって必ずしも申立てが受理され、後見人選任の審判が下るというわけではありません。成年後見制度にそぐわない場合や、制度を利用する本人に問題がないと判断された場合には申し立てどおりにならない可能性があります。
成年後見制度を利用できる場合かどうかを事前にしっかりと把握しておく必要があります。
両親や兄弟など、身近な親族や非常に親しい人物に、老化による衰えや認知症など精神疾患などを理由とした判断能力の低下が見られた場合、その人物の財産管理を第三者が行うことができるよう、法律の下で行う手続きを成年後見といいます。
成年後見は家庭裁判所に対して申請を行うことで初めて受理されます。
その後、無事に家庭裁判所から後見の審判と成年後見人の選任がされたからといって、それですべて完了というわけではありません。新たに後見人として選任された者は、1年に1回程度、家庭裁判所への報告義務があります。
例えば、成年後見の対象となる者(本人)が保有する預貯金などの収支に関する状況や財産状況と内容を逐次、家庭裁判所に報告する義務があります。
これは、1年から3年の間に1回行う事が規定されており、この義務を怠ってしまったり忘れたままでいると、後見人としての解任されてしまうこともあります。
さらに、成年後見制度を利用した場合、財産の管理と状況の逐次報告が義務づけられているという点と、この制度自体が本人の財産保護を目的とした制度であることから、節税対策の為の生前贈与を行ったり、財産を担保として提供したり貸し付けを行うことが原則として認められません。
こういった注意点をしっかりと把握した上で、実際に申立てを行うかどうか決める事が大切です。
成年後見の申立てを家庭裁判所に対して行い、裁判所による審判とその結果を得るまでの一連に流れについてご紹介します。
まず、最も重要となるのが、趣旨と役割、禁止事項など制度の具体的な概要を把握です。法律によって定められた公的な制度であることから、内容をしっかり把握していなかった結果、行ってしまった行為が禁止行為であったり、後見人の指定を取り消されたりする危険性があるため、まずはそういった概要をしっかりと理解しておく必要があります。
次に、成年後見制度を利用する者について主治医が作成した診断書を入手する段階へと移行します。
診断書は、家庭裁判所に提出する必要がある書類の一つでもあるほか、本人の判断能力を知るためにも重要な書類であることから、必ず診察を受けた上で、作成を依頼し入手するようにしましょう。
診断書を主治医に書いて頂いたら、本人の住民票がある地を管轄する家庭裁判所へと提出するとともに、他の必要書類の作成手順へと移ります。
この段階から、手続きの代行を依頼することもできるので、司法書士や弁護士などの専門家へ一任することもできます。書類を全て用意し終わったら、後は最寄りの家庭裁判所へと書類を提出し、申立ての手続きが完了します。
なお、行政書士は最初に提出する書類を作成することが出来ないため、成年後見に関して相談するのには、相応しくありません。
その後、約1ヶ月から2ヶ月程度の期間を経て、申立てに対する審理の後、審判の確定が行われ、審判の結果が郵送されてきます。
これが、成年後見の申立て手続きにおける大まかな流れです。