成年後見のよくあるご相談2
当事務所では、月に10件程度成年後見に関するご相談を受けています。その中でよくあるご相談を紹介していきます。おそらく多くの方が疑問や不安に思っていることかと思います。なお、当事務所の繁忙期にはご相談件数を減らすことがありますので、相談件数は目安程度に考えてください。
1.遠方でも成年後見申し立ての手続きをお願いできますか?
成年後見の申立をするには、管轄の裁判所に申立書類を提出しなければなりません。管轄というのは、制度を利用する方(ご本人)の住所地によって決まります。入院中の方や施設に入居している方については、住民票がどこにあるかによって代わってきます。住民票上の住所と居所が異なる場合には、住民票で判断します。ただし、ケースによっては住民票上の住所ではなく、居所で申立を行うこともあります。例えば、住民票上の住所は大阪ですが、子供たちがいる東京の病院に入院しているという場合です。大阪には居ないわけですから大阪で申立を行っても意味がありません。この場合には、上申書を付けて東京家庭裁判所へ申立を行います。
当事務所では、新潟、大阪、福島、神戸など地方であってもお受けしております。親が地方で、子供達が東京で仕事をしていることが多いので、このような案件も多くなってきています。
2.まだ元気なのですが、これからのことが心配です。何か対策はありますか?
一般的に後見というと法定後見のことをいいます。この法定後見制度はご本人の判断能力が低下してしまった場合に利用することができます。
しかし、まだご本人が元気で、将来の対策をしておきたいということであれば、「任意後見制度」を利用すると良いでしょう。これは、後見人となってもらいたい人をあらかじめ決めておくことができ、認知症などで判断能力が低下してはじめて、任意後見人の業務が開始されるというものです。なので、一生元気なのであれば、任意後見人は特にすることがありません。元気なのであれば、自分でできるからです。
それと「法定後見」の場合には、誰が後見人となるかは分かりませんが、「任意後見」の場合は、必ず指定された人が任意後見人となります。この人に将来のことはお願いしたいという人がいれば、是非任意後見制度のご利用をお勧めします。
3.私は足が悪いので、成年後見人に財産管理をしてもらいたいのですが。。
成年後見制度を利用するには、判断能力が低下していることが必要です。単純に身体が不自由ということだけでは、利用することができません。それでは、身体に障害を抱えている方や判断能力に衰えはないものの身体能力が減退しているという方はどうすれば良いのでしょうか。
こういうときのために、「財産管理契約」というものがあります。これは民法上の委任契約と同じです。ただし、銀行の手続き、公共料金の諸手続き、役所の手続きなどその手続きごとにいちいち委任状を書いてお願いするというのは面倒です。そうではなくて、あらかじめお願いしたい事項を契約書の内容としておき、一度契約してしまえばそれ以降委任状が無くてもこの契約書があれば手続きを代理して行うことができるというものです。
4.私は80才で高齢ですが、成年後見人になれますか?
成年後見人を選任するのは裁判所(裁判官)であるため、可能性としてはありますという回答になります。健康状態が良くなかったり、高齢である場合には、選任されにくいのはあります。老老介護ではありませんが、80才が後見人になるというのは、実際問題難しいでしょう。この場合には、もっと若い方と一緒に共同で後見人候補者とすると選任される可能性が高くなります。80歳の後見人に万一のことがあっても、もう一人後見人がいるわけですから安心です。
なお、制度を利用する人と後見人が東京と北海道といったように余りに遠距離であれば、業務をこなせないのでこれも可能性としては低いでしょう。