身寄りのいない人の後見申立
後見申立を行うことができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族です。しかし、中には身寄りのいない人もいらっしゃいます。申立権者の中に本人が入っているものの、判断能力が低下しているから利用しようとしているわけですから、本人申立は現実的ではありません。そこで、市区町村長にも申立権が付与されています。
私が後見人となっていた案件では、四親等内に親族は居るものの、高齢であったり、連絡を数十年取り合っていないような疎遠な人だけでした。ご本人には、後見人をつけて身上監護・財産管理を行わなくてならない緊急性が認められたため、区長申立により、後見人として当事務所が選任されました。法律上は、「その福祉を図るため特に必要があると認めるとき」に市区町村長が申立を行います。
こういった市区町村長の申立が行われていることは非常によいことだと思いますが、これはごく一部で、人に恵まれているといえます。血縁関係などありませんが、とても気にかけてくれるご近所さんがいたり、アパートの大家さんがいい人だったり、人に恵まれた方は、市区町村長申立により、後見人がつき、財産管理も任せられ、より良い身上監護を受けられています。しかし、こういった人ばかりではなく、非常に劣悪な環境で誰とも関わらずに生活している人もいます。
私は豊島支部に所属していますが、後見業務に積極的に取り組んでいる有志で3ヶ月に1回程度勉強会を行っています。先日話題に上がったので、虐待案件・放置(ネグレクト)案件です。四親等内の親族が居ないわけではなく、むしろ同居している家族がすぐそばに居るのですが、その家族から虐待を受けている、放置されているという案件もあります。こういった案件では、到底家族による後見申立を期待できるわけもなく、区の社会福祉団体などの支援により区長申立が行われます。もっとも、区長申立が行われるまでには複雑な決済プロセスがあり、長いと半年から1年程度の時間が掛かります。当事務所が就任した案件では、在宅独居の方でしたが、とても一人で生活できるような状況ではなく、すぐに1日3回のヘルパーの手配、訪問看護の手配を行いました。また、特養の申し込みも至急行いましたが、入るまでの間は毎日が冷や冷やの状況でした。ご本人は自分で水も飲むことができない状況ですから、いつ危険な状態になってもおかしくありませんでした。
もう少し、区長申立までの期間が短縮されれば、このように危険な状態も回避できたのではないかと思った次第です。