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令和2年の成年後見制度に関する統計について

「成年後見関係事件の概況-令和2年1月~12月」を最高裁判所事務総局家庭局という部署が公表しています。

 一般の方がご覧になる機会はほぼないと思いますので、簡単に記載していきたいと思います。原文を参考したい方は、上記のワードで検索すれば見ることが可能です。

【各申立件数について】
 まず、成年後見に関する申立件数は、37,235件と前年比で3.5%増となっています。申立てとは、後見開始・保佐開始・補助開始・任意後見監督人選任申立のすべてを含みます。毎年少しずつ申立件数が増加しています。高齢者が増加しているので当然のことですし、認知度も上がってきているためだと思われます。

 後見開始・保佐開始・補助開始・任意後見監督人選任申立の件数が、37,235件となっていますが、その内訳をみていきましょう。

 後見開始70.8%、保佐開始20.2%、補助開始6.9%、任意後見監督人選任申立1.9%となっています。圧倒的に後見開始が多いのが分かります。逆に、任意後見監督人選任申立が圧倒的に少なくなっています。任意後見監督人選任申立は、そもそも任意後見契約を締結している件数が少ないのと、ご本人の判断能力が低下しなければ任意後見監督人選任申立を行う必要がないためです。ちなみに、任意後見監督人選任申立の件数は5年前よりも減少しています。

【申立ての審理期間】
 申立てを行ってから、後見人等が選任されるまでの期間は、1か月以内39.1%、2か月以内31%となっており、申立ての70%は2か月以内に後見人等が選任されていることが分かります。ちなみに、当事務所が後見人となる場合は平均1週間です(本人調査がある場合を除きます)。最短は2日です。当事務所は後見業務に特化して行っていますので、申立書類等に不備がないためスムーズに手続きが進みます。

【申立人について】
 後見等開始申立てを誰が行うかという割合です。家族(親族)が一番多いのだろうなと思われますが、一番多いのが市区町村長で23.9%です。後見申立は本人やその家族が行うことがもちろん多いのですが、後見制度の利用が必要にもかかわらず申立てがされない場合には、市区町村長も行うことがあります。身寄りがいない方や身寄りがいても協力を得られないというケースもありますから、そういった場合に市区町村長が申立てを行うことになります。当事務所でも市区町村長が申立てを行った案件の後見人になることが増えてきている印象です。各自治体の職員が非常に頑張っているお陰で、今まで後見制度を利用できなかった方も利用できるようになったという側面もあります。各自治体の職員の方と接することも多いですが、一人一人が担当している件数が多く、負担が過多になっているように思います。そんな中でも職員の方々が精いっぱい仕事をしており、頭が下がります。  
そして、2番目は子供21.3%、3番目は本人20.2%となっています。

【本人の男女別について】
 本人(制度を利用されている高齢者・障碍者の方など)が男性43.4%、女性56.6%となっています。当事務所の割合だと、男性:女性が3:7となっています。当事務所は少し女性に偏っていることが分かります。

【開始原因について】
 後見等が開始される理由は、皆さんがご想像されるとおり、1番が認知症です。次いで知的障害9.9%、統合失調症9%となっています。2番が知的障害なんですね。当事務所でも5人の知的障害の方の後見人をしています。今後、知的障害の方のご両親が高齢化していきますので、こちらも増加していくのではないかと思います。なお、当事務所で後見人をやらせて頂いている知的障害の方は皆さん明るい性格で話をしていてとても楽しく、元気を頂いています。

【鑑定について】
 後見等開始申立てを行う場合には、必ず医師の診断書を提出する必要があります。しかし、その診断書は結構簡易なものです。人の判断能力を「後見」「保佐」「補助」の3類型に分類するというのが難しい場合もあります。1日の中でも判断能力が変化する方もいますし、1週間の中で変化する方もいます。たまたま、診断を受けた日だけ体調が悪かったという方もいます。
 上記のように「後見」「保佐」「補助」を明確に分けることができないときに、家庭裁判所の方から「鑑定」を受けて下さいと言われることがあります。この「鑑定」が実施される割合ですが、全体の6.1%となっています。当事務所でも申立て10件のうち1件あるかないかということで、ご依頼者様には説明しています。「鑑定」の費用、つまり鑑定を実施する医師の報酬ですが、10万円以下93.2%となっています。

【後見人と本人の関係について】
 以前から後見人には他の専門職と比較しても司法書士が一番多くなっています。これは、司法書士個人が活躍しているだけでなく、司法書士の団体であるリーガルサポートの役割が非常に大きいです。後見人というのは他人の財産を預かるため、その後見人を監督する必要があります。家庭裁判所も監督をしていますが、十分ではありません。そこで、司法書士が後見人になっている場合には、リーガルサポートがさらにその司法書士を監督しています。つまり、我々司法書士は家庭裁判所だけでなく、リーガルサポートからも監督を受けることにより、より適正な後見業務を行うことが求められています。そういった体制を構築していることからも司法書士が専門職の中で一番多く後見人に選任されているわけです(30.4%)。さらに、専門職の中でみると37.9%と圧倒的に多いのです。2番目は弁護士21%、3番目は親族19.6%となっています。

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