余命が数ヶ月しかないため、亡くなった場合の相続手続きを相談にのってもらいたい【法定後見】
ご相談者様の状況
相談当初は、成年後見の相談ということではなく、将来の相続手続きに関する相談でした。
依頼者様のお父様が末期ガンで余命数ヶ月しかないという状況で、亡くなった場合の相続手続きについて事前に無料相談にのってもらいたいということでした。
当事務所のサポート内容
初回相談時に家族構成等ヒヤリングしているうちに、相談者様の母親は要介護5で、認知症により施設へ入所していることが分かりました。母親は認知症により、日常会話もままならない状況で、家族のことも分からないことがあるとのことでした。
将来、父親が亡くなった場合には、その相続手続きにおいて母親に成年後見人を付けなければ、手続きが進まない旨ご説明しました。なぜ母親に成年後見人を付けなければならないのか。将来父親が亡くなった場合の相続人は、母親と相談者様とその弟様の3人でした。父親の遺産について、相続人3人で遺産分割協議を行うことになりますが、母親は法律的な意思表示をすることができないため、代わりとなる成年後見人に意思表示をしてもらうことによって、遺産分割協議を成立させることになります。
今回、相談者様が母親の成年後見人となることを希望されていましたので、もうひとつ問題が出てきます。難しい話になりますが、「特別代理人」という者を選任する必要が出てきてしまうのです。詳しくは後述します。
まず、成年後見人選任の申立を行い、さらに特別代理人の選任も必要になるなど、案件としては時間も手間もかかるものでした。
そこで、当事務所では①成年後見の選任申立、②特別代理人の選任申立、③不動産の名義変更の手続きを代行してサポートを行いました。
成年後見人選任申立
数か月後、父親が亡くなり、相続の手続上遺産分割協議を相続人で行う必要がありましたが、上記のとおり、母親が認知症により協議できる状態ではありませんでした。そこで、まずは相談者様を成年後見人とする後見の申立てを行いました。早めに手続きを行いたいという希望でしたので、父親の死後3週間ほどで後見申立を行いました。本来1か月かかるところ、裁判所の事務処理の速さも手伝って、申立から2週間程度で後見人選任の審判が下りました。
特別代理人の選任申立
相談者様が無事に後見人に選任されることになりました。相談者様・弟様、そして母親とで遺産分割協議をするには利益相反となり、「特別代理人」の選任が必要でした。どういうことかというと、相談者様と母親との利害が対立する場面では、相談者様は母親の成年後見人として遺産分割協議を行うことを法律では禁止しているのです。これは、被後見人である母親本人の利益を保全することが目的です。そこで、一体誰が母親の代わりに意思表示をすることになるのかですが、それが「特別代理人」となるわけです。
ちなみに、家族が後見人になる場合、利益相反となり特別代理人の選任が必要になることが多くあり、決して珍しいことではありません。
そこで、当事務所の司法書士を特別代理人の候補者とする手続きを家庭裁判所で行いました。特別代理人の選任申立を行う場合、成年後見の申立と同様に、「候補者」を立てることができます。2週間程度で審判が下り、希望どおり当事務所の司法書士が選任されました。
遺産分割協議書の作成
被後見人である母親の特別代理人として遺産分割協議を行う場合、特別な事情がない限り、法定相続分は確保しなければなりません。母親は施設の費用など将来にある程度お金が掛かることが想定されたため、法定相続分(2分の1)を超える割合を相続することで、協議がまとまりました。なお、不動産は売却しない限り現金にはなりませんので、不動産は子供たちが、預貯金は母親が相続するということになりました。
不動産の名義変更
預貯金は母親が、不動産は相談者様と弟様の子供が相続するという遺産分割協議に従い、不動産の名義を子供へに書き換える手続きを行いました。
結果
非常に手続きが多かったため、父親の死後から手続き完了まで半年近くかかりましたが、相談者様には初めに手続きの流れや期間・費用をお伝えしており、ほぼスケジュールどおりに行うことができました。また、相談者様は現役で働いており、なかなか時間を取れない方だったため、全て手続きを代行することができたと、とても喜んでおられました。
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