被後見人の財産で投資をしたい
入ろうとしている施設に話を聞きに行ったところ、後見制度を利用勧められたため、入所と同時に後見制度の利用も考えています。
母の預金は3000万円ほどあるのですが、施設に入れるとお金が掛かるので、どんどん減っていきます。
どのくらい生きるか分かりませんが、できるだけ3000万円は減らさないようにするため、証券会社を通して投資をして、その利益を施設の費用の一部に当てることを考えています。なにか問題はありますでしょうか?
認知症や高齢に伴う老人ホームの入所の際に、施設の方から成年後見人を立てて下さいと言われることがあります。実際、そのタイミングで、相談に来られる方が多くいらっしゃいます。 そして、後見人として選任された場合には、被後見人である母親の財産を元手に投資など利殖を行うことができるのか、問題となります。
今回の相談者の方は、決して自分のために使ってしまおうというものではなく、母親の財産を減らしたくないという思いからのご相談です。
成年後見人は、被後見人の財産を善良な管理者の注意をもって管理しなければなりません(善管注意義務)。
日常ではまったく用いない表現ですね。業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のことをいいます。後見人として他人の財産を管理する以上、自分の財産と同じ程度ではなく、それ以上にしっかり管理することが要求されます。後見人は、善良な管理者の注意をもって被後見人の財産を管理しなければならず、この管理には利殖行為は含まないと解されています。
株式投資や投資信託は、通常の預金で得られる利息よりはるかに良い、配当や利回りが得られる可能性があります。一方、その裏返しとして、損失が発生するリスクもあります。裁判所としても、被後見人の財産を積極的に増やすことを望んではおらず、現状維持が望ましいと考えます。
もっとも、被後見人が元気なうちにした投資が高リスクという場合もあると思います。損失を出し続けているのであれば、解約したほうが良いと思いますが、直ちに解約しなければならないというものでもありません。施設費用のため必要があれば解約してください。
これから、後見の申立を行うという場合に、裁判所に対し利殖が目的であると分かったら、恐らく申立人が後見人となる可能性は極めて低く、専門職の後見人が選任されるでしょう。また、申立時にこれを秘して行い、後見人となった後に利殖行為を行ったら、厳重注意を受けるか解任されてしまうでしょう。
万一、投機的な取引を行って、財産を減少させてしまった場合には、その減少分の損害を賠償しなければなりません。これは、後見人が善管注意義務を負っているからです。そして、解任される可能性が高いです。もっとも、その場合でも、新たに専門職後見人が選任されその専門職後見人が財産管理を行い、その親族が身上監護を行う後見人となることもあります。以外このケースもあります。
あくまでも、被後見人の財産の保全を第一に考えて管理し、これは大丈夫かなと不安に思ったら、裁判所に確認してみるのが良いです。常に善管注意義務を負っているのだという意識を持つことが大切です。