成年後見と贈与
私の妹は生まれつき体が弱く、普通の人のように会社で働くことができません。そのため、父は妹に年間100万円もいかない金額ですが、生活のために渡していました。家族もこのことはみんな知っているし、何よりも父親の意思によって今までずっと行われてきたことです。
やはり、後見制度を利用したら、贈与は出来なくなるのでしょうか?
原則として、被後見人の財産は本人自身のために利用しなければなりませんので、妹さんに贈与するということはできません。これが原則です。
しかし、父親が元気なうちから毎年体の弱い子供のために援助を行うというのは、特段変なことではなく、またそれが親心というものでもあります。いわば、父親の扶養に入っていたようなものです。 これが、判断能力が衰えて、後見人がつくと一切認められないというのは、普通の感覚からいっておかしい話です。それは成年後見制度を利用しても同じです。本人の意思を最大限尊重するというのは、成年後見制度の理念でもあります。
これと似たような事例があり、裁判所に相談してみたことがありますが、監督人の意見を聞いて、監督人が良いといえば大丈夫でしょうが、金額はだいぶ減らされるようなことを言われました。裁判所としては、原則を貫きたいというものは良く分かります。原則を貫けば、問題は少なくても発生しません。
しかし、原則を貫きたいという思いと本人の意思の調整が必要になってきます。当然父親の財産がどんどん減ってきているのに、今までどおり贈与し続けるというのは、良くないでしょう。父親の財産上や娘の財産状況など総合的に考慮して判断する必要があります。
まさにケースバイケースというほかなく、相談者様の場合に、どうなるのかは総合的に判断しなければ何ともいえません。やはり、被後見人の置かれた状況と意思を調整しつつ、どのようにするか後見人だけで勝手に決めてしまうのではなく、監督人がいれば監督人、あとは裁判所とよく相談することをお勧めします。