成年後見申立の際によくあるご相談1
裁判所が「後見」「保佐」「補助」の類型を判断するのですか?
裁判所は、法律の専門家が集まっているところですが、医療や医学に関する知識が必ずしもあるわけではありません。後見制度を利用する方の判断能力の程度は、原則として主治医が診断して決定します。
かかりつけの医者がいればその先生に書いて頂くことがベストです。かかりつけ医がいなければ、診断書を書くために新規の先生であっても構いません。なお、病院であれば医師は常駐しているはずですが、施設だと2週間に1回とか、1か月に1回しか施設に来ないという場合もあります。なので、診断書作成の依頼をしてから、医師に作成してもらうまで結構時間が掛かることがあります。早めに依頼するようにしましょう。
キャッシュカードがあるので、勝手に本人の口座から出金してもよいですか?
銀行で口座を開設する際、名義人以外の人は利用できないと決められているのが通常です。本人が認知症で判断能力がないにもかかわらず、子供が勝手にお金を引き出していれば、それは問題となります。銀行に本人以外が利用していると分かれば、手続きに応じないこともあり得ます。何かあったときから、成年後見の手続きをするのではなく、このような状態になったならば、速やかに後見人の手続きをしましょう。
なお、銀行によっては代理人カードを発行してくれるところもあります。代理人カードが発行されている場合には、その代理人が出金することは問題ありません。
本人の財産状況が全く分かりませんが、それでも後見申立は可能ですか?
家族といえども、両親、兄弟、甥姪の財産を常日頃把握している人はまずいないと思います。両親の財産であれば把握している人もいるかもしれませんが、兄弟姉妹・甥姪であれば、なおさら分からないと思います。成年後見申立の段階では、すべての財産を把握している必要はありません。私の経験でも全く分からないという状況で申立を行ったことが数件あります。
成年後見人に選任されれば、本人と同様に調査する権限がありますので、それから財産目録を作成すれば良いのです。ちなみに、後見人に就任した後、おそよ2か月以内に初回報告を家庭裁判所に行う必要があります。財産調査と年間の収支予定を立てる必要があります。全く財産状況が分からない場合には、おそらく2か月以内の提出は難しいと思います。提出期限内に財産調査が完了しなければ、担当の裁判所書記官に期限の延長を申し出るようにしましょう。何も言わずに期限を経過してしまうのは、裁判所の心証を悪くする可能性があります。
同意書を出してくれない人がいますが、大丈夫ですか?
同意書というのは、成年後見の申立を行うこと及び後見人候補者が後見人となることに同意するか否かを確認する書面のことをいいます。その同意書を書くように依頼しても、書いてくれないというのは時々あります。同意書というのは、成年後見申し立ての際にあると、手続きがスムーズに進むということメリットはありますが、出してくれない人がいるからいって、手続きができないわけではありません。なので、特に問題はありませんが、裁判所が、同意書を出していない人がいるということは、家族内で争いがあると判断して、家族以外の第三者に成年後見人に選任することもあります。