成年後見のよくあるご相談3
成年後見人を付けることでデメリットはありますか?
■取締役など一定の職に就けなくなります
成年後見を利用する人は、判断能力がない、あるいは低下している人です。会社の取締役や弁護士、医師など特に高度な判断能力が求められる職には付くことができません。仮にこれらの職にあったものが被後見人となってしまった場合には、失職となります。これは当然のことといえます。認知症の患者が手術を行っていたら、とても危険ですよね。
※2020年現在、この欠格事由の規定は撤廃され、それぞれの資格に応じて欠格するか否かが決定することになりました。
■相続対策ができなくなります
相続対策とは、遺族が遺産を相続した際に支払う税金を少なくすることをいいます。いわば節税対策です。支払うべき税金を少なくするということは、簡単にいうと被後見人の財産価値を減少させることです。財産価値が減少すれば、そのぶん支払うべき税金が減少するのは当然のことです。
しかし、成年後見制度の目的はご本人の財産の保全にあります。ご本人の財産を維持・増加させることはできても、減少させる行為はできません。もちろん、入院費・施設費用・娯楽費など合理的理由がある出費で財産が減少することは問題ありません。つまり、相続対策はご本人のためのものではなく、相続を受ける相続人のための行為である点が問題なのです。
また、孫にお小遣いを渡す程度であれば問題ありませんが、100万円を贈与する、証券を贈与する、不動産を贈与するといったことは、合理的な理由がない限り行うことはできません。本人のために財産を利用していないからです。
さらに、節税対策で相続人を増やすために養子縁組をするということがありますが、これはご本人の意思に基づいて行うのであれば問題ありませんが、そうでなければ絶対に行うことはできません。養子縁組や婚姻などの行為を身分行為といいますが、これは誰かに代わってしてもらうという事柄ではないため、後見人といえども法定代理人として手続きを行うことはできません。
■専門職が後見人となる場合がある
後見人に司法書士や弁護士など専門職がなることがあります。この場合には当然ボランティアで専門職が後見人になることはありません。報酬を専門職に支払わなくてはなりませんので、そこはデメリットのように感じます。もっとも、実際には報酬は裁判所が決定します。
本人の財産や後見人の行った業務内容によって変動しますが、裁判所がご本人の財産状況等を総合的に考慮して決定するため、報酬額についてはそこまで心配する必要はありません。
■必ずしも親族が後見人になれるわけではない
成年後見の申立を行う場合、候補者を親族とすることができますが、必ずしも親族が選任されるとは限りません。裁判官がご本人の状況や後見人候補者の状況、家族状況など総合的に判断して、誰を後見人とするか決定します。親族ですとどうしても財産の管理があまくなり、財産の使い込みをしてしまうという事件が後を絶たないからです。
親族が選任されないケースですと、司法書士・弁護士等の専門職が選任されることになります。ここで注意が必要なのは、専門職が後見人となりそうなケースならば、後見人の候補者をその申立の手続きを依頼した司法書士等とした方が良いです。そうしないと、どこの誰か分からない専門職が後見人となってしまい、その専門職が信用できる者かどうか分かりません。後見制度を利用しないほうがよかったということにもなりかねません。当事務所でも、過去そういった事例がありました。知らない弁護士が後見人に選任され、全く後見人としてどのようなことを行っているか分からず不安だらけということがありました。