成年後見終了時の財産の引継について
成年被後見人が亡くなった場合には、被後見人の遺産である預貯金、株券や不動産などの財産を相続人等に引継ぎを行わなければなりません。後見業務の終了事由は被後見人の死亡のみならず、後見人の辞任や解任の場合にも同様に、財産の引継業務が最後に発生します。
従前は、相続人全員に財産を引き渡すか、相続人全員から同意書を取り、相続人の代表者一人に引き渡す運用がされていたようですが、現在は、相続人の一人に引き継げばよいという運用になってきています。実務上、相続人全員に引き継ぐ或いは相続人全員から同意書をとることは難しく、財産の引き継ぎ業務が完了しないということが多かったようで、現在は、相続人の一人に引き継ぐことになっています。ただし、相続人間に相続で争いがある場合には、慎重にならなければなりません。
相続人と一言でいっても、ケースによって変わってきます。例えば、相続人が誰もいないというケースも考えられます。この場合には、家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立を行い、選任された相続財産管理人に財産を引き継ぐことになります。
また、相続人はいるものの遺言書で受遺者が確定していれば、その者に引き継ぎます。なお、遺言執行者がいる場合には、その者に引き継ぐことになります。
さて、一番多いのは、相続人がいる場合で、遺言書がない場合です。相続人一人であれば問題なく、その者に引き継いで終わりです。これに対し、相続人が複数いる場合、そのうちの一人のみに引継ぎを行った場合、他の相続人からクレームが入ることもあります。動産や現金を特定の相続人に引き継いだところ、その者が消費してしまうことも考えられます。もっとも、後見人として責任が発生するという訳ではなく、他の相続人からクレームが入る可能性は否定できないというレベルです。なお、通帳やキャッシュカードを渡す場合には、当然凍結した状態で渡す必要があります。実務上、被後見人が亡くなってすぐに、口座を凍結することは非常に不便で、1、2ヶ月は引落しがあったりするので、そのままにしておくこともが多いです。もちろん出金することはしません。
上記のとおり、相続人全員の同意が得られるのであれば、同意を得て相続人の一人に引き継ぎ、それができない場合には、慎重に相続人の一人に財産の引継ぎを行うことになります。なお、遺産分割協議が被相続人死亡後速やかに整うようであれば、それまで待っているというのも一つの手かもしれません。家庭裁判所としては、本人死亡後6か月以内に引継ぎなさいということですので、万一6か月を超過しそうな場合には、予め家庭裁判所へ伝えておくと良いでしょう。