夫が成年後見制度を利用したら配偶者の生活費はどうすればよい?
成年後見に関する相談を年間60件近く受けていますが、よくある相談として次のようなものがあります。
夫に後見人を付けたいが、後見人が付くと配偶者である私は夫のお金を使うことができなくなってしまうのですよね。今まで夫のお金で生活していたため、自分の年金だけでは到底生活できなくなってしまうので困っています。何か他の方法はないのでしょうか?
相談者の多くが事前にインターネットで成年後見について調べてから、事務所にいらっしゃいます。私は普段インターネットで成年後見について勉強のために検索することはありませんが、相談者の方がどういった情報を得ているのか知りたくて検索することがあります。
弁護士や司法書士が書いているサイトは、やはり専門職ということもあり嘘が書かれていたり、偏った情報のみ書いているということは見受けられません。
しかし、弁護士や司法書士以外が書いている週刊誌的な記事には、かなり偏った情報が結構あります。読まれなければ意味がありませんから、面白おかしく書いているのでしょう。私も知識がなければ、「後見制度というものは相当悪い制度だ」と感化されていたはずです。
ちなみに、改善すべき点がないというわけではありません。例えば、監督人の報酬が本人の財産から支払われていますが、これは国が支払うべきだと思います。家庭裁判所が本来は監督すべきところ、それをいわば監督人に外注しているわけですから、それを本人負担とするのは、お門違いだと思います。専門職が監督人をすることが多いですが、監督人としても少ない報酬で、かなりの時間と手間が掛かる案件もあります。国が相当額の報酬は支払いますよということになれば、専門職も安心して監督人を引き受けることができます。
さて、話が大きくそれましたが、今回のご相談者は、様々なインターネット上の情報に触れて心配になったのだと思います。しかし、このよくある相談に関しては、心配することはありません。
今までどおり、ご主人のお金で配偶者の生活費を賄うことが可能です。もちろん、無尽蔵にというわけにはいきません。ご主人のお金が尽きれば、配偶者の生活費を負担することはできません。最終的には、ご主人の財産状況、収支、年齢、今までの背景など総合的に考慮して判断することになります。裁判所も事前にあるいは事後に説明すれば了承してくれます。できれば、事前に裁判所へ連絡しておくことをお勧めします。
裁判所のサイトにも次のように記載されています。
https://www.courts.go.jp/nara/saiban/tetuzuki/kouken_qa/index.html
★★★ここから★★★
Q:被後見人の財産から支出できるものとしては,どのようなものがありますか。
A: 被後見人自身の生活費のほか,被後見人が扶養義務を負っている配偶者や未成年の子などの生活費,被後見人が負っている債務の弁済金,後見人がその職務を遂行するために必要な経費などがあります。
(当然に支出できるもの)
•被後見人の生活費・入院費や施設費・税金
•後見事務費(裁判所に提出する書類のコピー代,切手代,交通費ただし公共交通機関に限る〉,各種手数料など,後見人の仕事をする上で発生する実費)
•被後見人の財産の維持・管理の費用
•ヘルパーの人件費
•後見人が選ばれる前の立替金(領収書等が必要)
•弁護士や司法書士への報酬
(原則として支出できるもの)
•法事の費用,被後見人名義で出す冠婚の祝儀や葬祭の香典
•扶養家族の生活費
•被後見人が死亡したら入る墓
•被後見人名義の負債の償還
(明らかに不適切な支出)
•被後見人と同居していることを理由にした後見人名義のローン返済
•退院の見込みがないにもかかわらず引取りを理由にした後見人の自宅改築費
※ 判断に迷うような場合は,事前に家庭裁判所にご相談ください。
★★★ここまで★★★
扶養義務を負っている配偶者の生活費は、ご主人の財産から支出してもよいと記載されています。ご安心ください。
ただし、こういったことを知らない司法書士や弁護士も中にはいると思われます。ご心配の方は、まずは当事務所の無料相談にお越しください。