遺言で後見人を指定するケース
かなり進行しているらしく、もって半年だろうということです。そこで母親Bは、自分が死んだときのために、Aの未成年後見人としてBの兄Cになってもらいたいと考えています。CはよくAの面倒みてくれていて、Aも親のように慕っています。
どのようにすれば、Aの未成年後見人をCにすることができるのでしょうか?
親権者は一般的には、未成年者の両親ということになりますが、質問の事例のように、幼くして父親が亡くなってしまった場合には、母親一人が未成年者に対して親権を行使することになります。そして、単独の親権者である母親が死亡してしまえば、他に親権者がいなくなることから、未成年後見人を指定することが認められています。
ただし、管理権を有しない親権者は、未成年後見人を指定することは出来ません。「管理権」とは、財産を管理する権限のことをいいます。子供が相続などで不動産や預貯金を相続することもありますから、その財産を管理する権限です。
なお、未成年後見人の指定は、遺言によってのみすることが可能です。
■親権者の死亡
■親権喪失
■親権辞任
■精神上の障害により判断能力を欠く状況にあるとき
■親権者が管理権喪失の宣告を受けたとき
■親権者が管理権を辞任したとき
■未成年者
■家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人
■破産者で復権していない者
■未成年者に対して訴訟をし又はした者・その配偶者・その直系血族
■行方不明者
以前は不可とされていましたが、平成23年の民法改正において、複数の未成年後見人の指定が可能となりました。通常は、複数の未成年後見人が共同して親権を行使することになりますが、裁判所の職権によって、一人には財産管理権だけを、もう一人は身上監護権だけを付与するということもあります。
遺言で未成年後見人を指定した者が死亡した場合、そのときに遺言の効力は生じます。そして、これと同時に遺言で指定された者が未成年後見人となり、その日から10日以内に「未成年後見開始届」を遺言書とともに市区町村長に提出しなければなりません。
なお、未成年者の保護の観点から、未成年後見人が辞任しようとする場合には、正当事由+家庭裁判所の許可が必要となります。正当事由とは、遠方など地理的事由、病気・高齢など身体的事由などが考えられます。
ちなみに、遺言よる未成年者の指定は、何も未成年後見人となってくれる人の了解を得る必要はなく、勝手に決めることが出来ます。勝手に決められてしまって、困るという場合にも家庭裁判所の許可が必要となりますので、注意が必要です。