任意後見制度の仕組み
任意後見制度とは、将来自分の判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめしっかりしているときに財産管理などを行ってくれる人を任意に決定できるという制度です。
この制度を利用せずに、判断能力が衰えてしまった場合には、財産管理などを行ってくれる後見人は裁判所が決定するため、必ずしも自分にとって望ましい人が選任されるとは限りません。これを任意後見制度に対して、法定後見制度といいます。
その点、任意後見制度を利用しておくと、判断能力が衰えた場合、後見人には自分が決めた人がなるので、安心なのです。
実際に任意後見契約の効力が生じるのは、任意後見制度を利用したいと思っている者、つまり委任者の判断能力が不十分になったとき、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されたときからになります。
ポイントは、「任意後見監督人が選任されたときから」任意後見契約の効力が生じるという点です。
判断能力が不十分になってしまってからではなく、まだまだ元気なうちにもしものときのために、財産管理などを誰にやってもらい、どのようにしてもらうのかをしっかり決めておくという高度に自己決定権を尊重する制度といえます。
任意後見契約の効力が発生するのはいつか?
任意後見制度の特徴は、この制度を利用したからといってすぐに契約の効力が発生するわけではないという点です。
実際に判断能力が低下して、裁判所が後見監督人という人を選任してはじめて、契約の効力が発生するのです。
任意後見契約は、しっかり判断能力がある人でないと契約を締結することはできません。判断能力がなければ「法定後見制度」を利用することになります。任意後見契約は、決して簡単な契約内容ではないため、当事務所では1回2~3時間かけてゆっくり丁寧に契約内容の説明を行います。すべての条項を一言一句読み合せをして、不明な点がないか確認していきます。すべての疑問点が解消されなければ、契約を締結しないようにしています。
なお、任意後見制度を利用する方が、手足が自由に動かないので、今すぐ財産管理をお願いしたいという場合には、あわせて「財産管理契約」も一緒に利用すると、今すぐ信頼できる人に財産管理を行ってもらうことができるのです。
任意後見契約を行う判断能力があるかどうかの基準は?
任意後見契約は、必ず公正証書で作成しなければなりません。
しかし、公証人は法律の専門家ではありますが医師ではないので、本人の判断能力に疑義が生じている場合には、専門家である医師の診断書を準備しておくことが望ましいといえます。後日トラブルになるようなことは避けたいものです。
任意後見契約は「契約」ですから、きちんとその契約内容を理解できていなければ契約は成立しません。
この任意後見契約を利用しようと思う人は恐らくほとんどが高齢者だと思われます。
また、最近物忘れが多くなってきたから、何か対策をしなければと調べたところこの任意後見契約を知ったという方の多いのではないでしょうか。 そうすると尚更、契約内容を理解できているかどうかの確認というのは重要になってきます。
将来トラブルになる可能性があるならば、医師の診断書のほかに、契約時の様子をビデオで撮影するなど対策も考えたほうがよいでしょう。
上記でも記載しましたが、当事務所の場合、くどいくらいに契約内容の打合せを行います。説明の回数を重ねていくと、委任者に契約内容を理解できるだけの判断能力があるかどうかは分かってきます。契約内容を何度も確認していくうちに、委任者からするどい質問があったり、任意後見契約をしようと思った理由など聞けたりするものです。