成年後見人は利益相反行為に注意!
成年後見人と成年被後見人との間で、利益が相反する行為は禁止されています。
利益相反行為とは、読んで字のごとく、成年後見人と成年被後見人の利害が相反する行為をいいます。
必ずしも、後見人にとって有利となる行為が該当するわけではなく、客観的・外形的に成年後見人と成年被後見人のお互いに利益がぶつかる行為をいいます。
例えば、被後見人が所有している宝石を後見人が買い受ける行為は、利益相反行為に当たります。
宝石の適正価格が500万円だったとします。仮に400万円で後見人が購入すれば、後見人は100万円得をすることになります。
逆に600万円で購入すれると、後見人は100万円損をすることになります。
これについて判例は、利益相反行為となるかどうかは、行為自体を外形的客観的に考察して判定すべきであり、後見人の動機や意図をもって判定すべきではないと考えています。
被後見人の宝石を後見人が購入すること自体、被後見人の不利益になる可能性があるとして、利益相反行為に該当することになります。
そして、利益相反行為に該当する場合には、後見人が被後見人の代理をすることは好ましくありませんので、後見監督人が代理するか、監督人がいなければ、特別代理人を選任しなければなりません。
その監督人あるいは特別代理人が被後見人を代理し、後見人と宝石の売買契約を締結することになります。
特別代理人とは、売買契約を締結するための代理人で、家庭裁判所が選任します。選任の申立てを行ってから、選任の審判が下りるまで、1ヶ月程度掛かりますので、不動産の売買など複雑な取引なの場合には、スケジュールは余裕を持って組むようにしましょう。
成年後見人が利益相反行為に該当するにも関わらず、行う行為は禁止されており、これに違反して行った行為は、「無権代理行為」といって、効力が生じません。
仮に、上記の例で、500万円する宝石を400万円で購入し、被後見人に損害を与えたときは、損害賠償責任を負うことになりますので、くれぐれもご注意下さい。