成年後見申立時の6つの注意点
みなさん、こんにちは。
東京・渋谷の司法書士の新宮信之です。
何度か後見申立時の注意すべきことについては書いてきましたが、まと
めて書いたことがなかったので、改めて書いていきたいと思います。
① 申立人が希望した候補者が後見人に選任されるとは限りません。
後見人に親族がなるケースを親族後見人といいますが、実に横領事件の
9割が親族後見人のケースなのです。
残り1割はなんとも恥ずかしい話ですが、司法書士や弁護士・行政書士
が横領することもあります。
そういうこともあって、現金や預貯金・株式など流動資産が高額(裁判
所・状況によって基準が異なります)の場合には、司法書士などの専門
家が後見人となることもあります。
しかし、現在の流れでは、親族を後見人に選任して、後見制度支援信託
の利用をさせる運用にしているようです。
したがって、候補者として希望を出すことは可能ですが、場合によっては、
第三者が選任されることもありますので、ご注意下さい。
もっとも、専門家に任せてしまったほうが、安心だし、手間が省けると
いう大きなメリットがあることも事実でしょう。
② 原則、「本人が死亡するまで」後見人の職務は継続します。
途中で面倒くさいから辞めたいということはできません。
「正当な理由」があれば途中であっても辞任することは可能です。
例えば、健康状態が良くない、仕事で海外へ行ってしまう、自分の親の介
護をしなければならないなど、正当な理由があれば、家庭裁判所の許可を
得て辞任できます。
銀行の手続などは平日しかできませんし、役所関係の手続も平日のみで面
倒なことも多いです。仕事で忙しかったり、ご自身の家庭のことで忙しか
ったりする場合もあると思いますが、後見人としての業務は本人が亡くな
るまで一生続きます。
③ 後見人が本人の財産を適切に管理しなった場合、解任されか、場合に
よっては損害賠償請求などの民事責任や業務上横領などの刑事責任を問わ
れます。
これは、非常に重要なことですね。刑事事件になってしまうことがありま
す。
今まで本人からお金をもらっていたから、これからも貰っていいだろう、
本人が死んだら相続人は自分ひとりだから、自分が使っても問題ないだろ
うと考えてしまうと、下手をすると家庭裁判所が刑事告訴をすることもあ
ります。
現に1年に1回は大々的に新聞報道されています。また、損害賠償責任も
負う可能性があるということは、頭に入れておきましょう。
④本人の財産を後見人自身のために使ったり、家族に贈与・貸与すること
原則としてできません。
⑤後見人は、家庭裁判所・監督人の監督のもと業務を行います。
⑥一度申立てを行なったら、家庭裁判所の許可を得なければ申立を取下げ
ることはできません。
以上になります。格別注意することではなく当たり前のことではありますが、
裁判所も忙しいものですから、注意を促したつもりでも、みなさんには伝わ
らないことも大いにあり得ます。
実際、裁判所からよく説明を受けなかったという方も相談にいらっしゃいます。
裁判所や担当者の親切度合によるのかもしれませんね。
申立をする前に今一度ご確認することをお勧めいたします。