成年後見制度の申請時に必要となる診断書とは
成年後見制度には任意後見制度と法定後見制度があります。
前者は、本人がまだ判断能力の落ちていない時に将来のために後見人を決めておく制度です。
任意後見契約を公正証書で行うわけですが、判断能力が十分でないと懸念がある場合には診断書を提出しなければならないケースもあります。
あくまで、契約ですので判断能力があることが前提となります。後者は、本人の判断能力になんらかの低下がみられる場合に身上監護と財産保護の目的で利用される制度です。
法定後見制度(以下成年後見制度)には3つの類型があります。
一つ目は「補助」です。本人には一定の判断能力があるため財産管理や契約を自分でもできるが、できれば誰かちょっとした援助・支援をしてもらいたいそいう方が相当します。
診断書でいえば、「自己の財産を管理・処分するには,援助が必要な場合がある。」という状態です。
二つ目は「保佐」で、日常生活は自分でできるが財産管理や契約は出来ない人が相当します。
診断書でいえば、「自己の財産を管理・処分するには,常に援助が必要である。」という状態です。
三つ目は「後見」で、もっとも判断能力が低いレベルのものとなります。日常生活における買い物にも誰かの助けを必要とする人が相当します。
診断書でいえば、「自己の財産を管理・処分することができない。」という状態です。
補助人、保佐人、後見人に与えられる権限は少しずつ違うため、どの類型に当てはまるかを正確に判断しなければなりません。
判断は意思の診断書に基づき、家庭裁判所が行います。このため、成年後見制度の申請をする際には本人のかかりつけ医による診断書の提出が必要になります。
また、診断書の内容を見て、改めて詳細な鑑定が行われることもあります。
成年後見制度を利用するにあたり、本人が後見、保佐、補助のどの類型に当てはまるのかの判断材料とするために診断書を家裁に提出しなければいけません。
診断書は本人のかかりつけの内科医などに作成してもらうのが一般的です。
なぜなら成年後見制度の申請における診断書の役割は本人の精神状況の把握なので、診察歴のある主治医に書いてもらうのが一番良いからです。
主治医に頼むことで短時間での作成が可能であり、費用面でも本人の負担が少なくてすみます。
また、気心の知れた医師であれば本人も安心して診断を受けることができます。診断書の内容では、家庭裁判所の判断の一般的な基準となるものから、現在の病歴とその重症度、精神状態に影響を及ぼしうる疾患や認知症の程度についての記載までいくつかの項目があります(管轄の裁判所によってフォーマットが異なりますが)。
高齢者で認知症などがかなり進んでいる場合にはその旨を記載することにより、成年後見制度が発足してからかなり経ちますので医療従事者にも十分浸透はしていますが、診断書の作成する理由が成年後見制度申請のためであることを、医師にきちんと説明する必要があります。
成年後見制度の申請には様々な書類が必要となります。
それらには用意するために費用がかかるものもあります。家裁に納めるものとして申し立て手数料、成年後見制度開始を登記するための手数料、連絡用の郵便切手代などの計約8000円程度です。診断書は、医療機関ににもよりますが、1万円程度で作成してもらえます。
まれに鑑定を求められることもありますが、これは本人の判断能力を医学的な見地から客観的に判断する必要があるためで、あらためて主治医に依頼することがほとんどです。
このため鑑定書作成の費用が5万円から10万円となりますので、心づもりをしておかなくてはいけません。