未成年後見の申立
親権者の死亡等のため未成年者に対し親権を行う者がない場合に、家庭裁判所は、申立てにより、未成年後見人を選任します。
未成年後見人とは、未成年者(未成年被後見人)の法定代理人であり、未成年者の監護養育、財産管理、契約等の法律行為などを行います。
未成年後見人は、親権者と同じ権利義務を有し、未成年者の身上監護と財産管理を行います。
未成年後見人には、親権を行う者とほぼ同一の権利義務を有する者と、管理権(財産に関する権限)のみを有する者の2種類があります。
前者は、親権を行う者がいないときに当てはまり(たとえば、民法839条1項により指定される場合)、後者は、親権を行う者が管理権(財産に関する権限)を有しないときにあてはまる(たとえば、民法839条)により指定される場合)です。
なお、未成年後見人は一人でなければならないとされてきましたが(民法842条)、改正法施行により2012年4月1日から複数人あるいは法人を選任することが可能となりました。
同時に民法842条は削除されました。未成年後見人は、親権者が指定するケース(民法839条)と未成年被後見人又はその親族その他利害関係人の請求により家庭裁判所により選任されるケース(民法840条)とがあります。
未成年後見人を申し立てることができるのは、次のような人です。
・未成年者(未成年者が申立てをするには意思能力があることが必要です)
・未成年者の親族
・その他の利害関係人
未成年後見人に選任されるためには、特別な資格は必要ありませんが、法律上、以下のような者は未成年後見人になることはできません。
・未成年者
・家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人
・破産者で復権していない者
・未成年者に対して訴訟をし又はした者、その配偶者、その直系血族(祖父母や父母等)
・行方の知れない者
未成年後見人は、未成年者の財産の調査をして、1ヶ月以内に財産目録を作成するほか、未成年者のために、毎年支出すべき金額の予定をたてなければなりません。
また、未成年後見が終了したときは、2ヶ月以内に財産管理の計算をしなければなりません。 未成年後見人から請求があった場合、家庭裁判所の判断により、本人の財産から報酬が支払われることになります。
未成年後見人が未成年者の財産を不正に消費するなどの不正行為をしており、未成年後見人の任務に適しない事情がある場合、未成年後見人を解任されることがあるほか、損害賠償責任を受けるなど民事上の責任を問われたり、業務上横領などの罪で刑事責任を問われたりすることもあります。
未成年後見の申立先は、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所です。未成年後見の申立てに必要な費用は、未成年者1人につき収入印紙800円分がかかります。連絡用の郵便切手も必要です。家庭裁判所によって異なる場合もあるので、申立てを行う家庭裁判所に確認してください。
未成年後見の申立てに必要な書類は次のようなものになります。
(1)申立書
(2)標準的な申立添付書類
・未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
・未成年者の住民票又は戸籍附票
・未成年後見人候補者の戸籍謄本(全部事項証明書)
・後見人候補者が法人の場合は、当該法人の商業登記簿謄本
・未成年者に対して親権を行うものがないこと等を証する書面(親権者の死亡の記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)の謄本(全部事項証明書)や行方不明の事実を証する書類等)
・未成年者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)、預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し、残高証明書等)等)
・利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証する資料(親族の場合、戸籍謄本(全部事項証明書)等)
なお、未成年後見の場合に設置することができる後見監督人を未成年後見監督人といいます。
未成年後見監督人の選任は、指定権者の遺言による指定(民法848条)、あるいは未成年被後見人、その親族若しくは未成年後見人の請求により又は家庭裁判所の職権により可能になります(民法849条)。
未成年後見監督人の職務は、未成年後見人の事務の監督等なので、後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は未成年後見監督人になることができません(民法850条)。