任意後見の注意点とは?
司法書士や弁護士など法律の専門家が、任意後見人となって財産の管理を行う場合には、犯罪行為に巻き込まれる可能性は非常に低いですが、そうではない一般の人が任意後見人となる場合には、注意が必要です。
東京都福祉保険局によると、任意後見制度を悪用した、財産侵奪行為などが問題になっているようです。
法定後見の場合には、家庭裁判所が後見人を選任します。これに対して、任意後見の場合には、高齢者自身が後見人となる人を指定できます。
身寄りもいなく、誰も相談できないような一人暮らしの高齢者を狙って、巧みに近づき、任意後見人となって、財産を侵奪してしまうというものです。
これは、何も一人暮らしの高齢者だけということはなく、近くに親族がいたとしても、誰にも相談させないように言葉巧みに、そして巧妙に悪意のある者が自分自身を信用させて、任意後見人になってしまうこともあります。
では、何が問題となるのかを説明していきます。
任意後見は、任意後見契約を締結しただけでは、後見人は何もできません。
本人の判断能力が低下して、家庭裁判所に監督人の選任申立を行って、監督人が選任されるとはじめて、後見人としての効力が生じます。
そうすると、本人の判断能力が低下する前は後見人はなにもできないことになるので、通常は「財産管理契約」も合わせて締結します。
そうすることで、判断能力が低下する前は、財産管理契約によって、判断能力が低下した後は、任意後見契約によって、後見人は本人の財産を管理・処分することができるのです。
そして、判断能力が低下して、家庭裁判所が監督人を選任すると、効力が生じると書きましたが、ここから後見人は、家庭裁判所の管理下に入ります。
なので、横領などの犯罪行為はしにくくなります。
そこで、悪意のある後見人は、本人の判断能力が低下しても、監督人の選任申立を家庭裁判所に行わず、財産管理人として、好き勝手に財産を処分してしまうことができますのです。本人は判断能力が低下しているので、しっかり監督できず、裁判所も関与しないので、まったくの自由になっていしますのです。ここが最大の問題点となるわけです。
したがって、任意後見契約を締結するときは、本当に信頼できる親族や友人に後見人になってもらうということが非常に大切です。周りに信頼できる人がいないという場合は、司法書士や弁護士に依頼することをお勧めします。