成年後見制度のメリット・デメリット
日本は高齢化が進み、高齢化社会、高齢社会を経て現在超高齢社会となっています。超高齢社会とは、全人口に対する65歳以上の人口の割合が、21%を超えている状態をいいます。一昔前は高齢化社会と言われていましたが、今は既にその段階ではありません。
これに伴って、成年後見制度を利用する人が増加しています(まだまだ社会全体の認知度からすると低いですが)。成年後見制度とは、認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人が、不動産の売買や預貯金等の財産の管理、介護施設等との契約などにおいて、不利益を被らないよう、生活をサポートする制度のことをいいます。
例えば、父親が亡くなり相続人が、母親と子2人という場合、母親が高齢により認知症で遺産分割協議を行うことができないことがあります。遺産分割協議が整わなければ相続手続きが進まないというケースもありますので、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい、その成年後見人が、母親に代わり、遺産分割協議や相続手続きを進めていくことになります。
よく無料相談で成年後見制度のメリットとデメリットを聞かれますので、まとめておきたいと思います。
【メリット】
1.後見人が家庭裁判所の監督の下、本人の財産管理や身上監護を行います。
→後見人が好き放題できるわけでは当然ありません。裁判所の監督の下に適切に後見業務を行うことになります。仮に後見人として相応しくない行為をした場合には、後見人が交代となります。また、介護サービスや施設所に関する契約等の生活に必要な契約を後見人が代理して行うことができます。
2.犯罪や悪徳商法などの被害から本人を守ることができます。
→判断能力が低下したことに付け込んで、高額な商品を売りつけたり、お金を贈与してしまったりしても、ご本人にとって不利益だと判断されれば、その法律行為を取り消すことができます。
3.後見人には公的な証明書が発行されるため、金融機関、証券会社、役所に関する手続きをスムーズに行うことができます。
→これも大きなメリットです。本来であれば、本人以外の者が金融機関等で手続きを行う場合には、必ず本人の委任状が必要となります。しかし、後見人となっておけば、その後見人は証明書さえ提示すれば、いちいち本人から委任状を貰う必要はありません。
【デメリット】
1.制度を利用すると原則として、本人が亡くなるまで続き、途中で中止することはできません。
→ご本人が亡くなるか、判断能力が回復するかいずれかの場合でなければ、後見制度の利用を中止することはできません。
2.本人の財産は、本人のためにしか使うことができなくなります。家族であっても自由に使うことはできなくなります。
→当たり前のことですが、ご本人の財産はご本人のためにしか利用することはできません。家族や他人に贈与することは原則として認められていません。
3.相続対策や資産運用はできなくなります。
→ご本人の財産の保全が目的ですから、相続対策などご本人の財産を減少させる行為はすることができません。また、株式やFXなど資産運用はすることができません。ただし、後見開始時に既に運用されている株式等についてはそのまま保有していても問題ありません。
以上のように、デメリットもありますが、本人の不動産・株式を売却する場合や定期預金を解約する場合など、成年後見制度を利用せざるを得ないことも多くありますので、今後さらに利用が増えていくのではないでしょうか。